【コラム】木を見るなら冬に行け

最近自分が個人的に思ったことなので人それぞれなんですが、
木の図鑑を持って山を散歩するなら冬の方がお得かも知れません。

寒いべや!という方、その通りですwしかし冬に木を見るとこんな利点があります。

・見るものがそれくらいしかない(笑)

・人があまりいない

・夏には見落としがちな&見られない特徴が浮き彫りになる

・落ち葉を観察できる




まず殺風景です。だから行かないという人も多いのでしょうが、冬にも冬なりの風情があるという点でひとつ。

…というのはあまり関係ないですが(笑)
夏に山へ行くとついつい林床の花に目が行ってしまう人も少なくはないでしょう。
登山をすれば高みを目指すあまり、登ることだけに気を取られていることだってあります。

その点、冬は気軽に登山が出来ない分身近なものを見る余裕ができます。
また、殺風景だということはそれだけ限られたもの、つまり木の観察に集中できるということなのです。

もちろん冬であっても野鳥や小動物に出くわすこともありますし、高所に行けば景色だって綺麗ですから、
時にはそれらに癒されるのも楽しみのひとつです。



次に人がいない。みんなこたつやストーブでぬくぬくしているのでしょうが、
あえて冬に外に出れば夏のように先を急かされることはありません。
また怪しまれることもなく(笑)、マイペースで歩くことができるのです。
ついでに言えば、真冬ならヒグマもお休み中ですからそこのところも心配が不要ですw



さて、冬に山に行けば夏にはなかなか見えない樹木の観察ポイントも押さえることができます。
具体的にはこんな感じ。

・冬芽、葉痕

・枝振り、枝つき、樹形

・樹皮


まず冬芽。これはそもそも夏にはわかりませんよね。
しかしこの冬芽というのは実はとても豊かな特徴を持っています。
意外に葉っぱよりよくその木を物語っている、と言っても良いかも知れません。

冬芽を見るポイントとしては

・形状や大きさ、色

・鱗片の特徴、有無

・毛の有無

ってところでしょうか。特に鱗片のない芽は「裸芽」といい、なかなか濃い特徴です。
なのでそれとわかれば夏にはない意外な姿に「こいつ裸芽だったのか!」と新鮮な印象を覚えますw

毛の有無は芽だけじゃなく若い枝にも言えますね。
シナノキとオオバボダイジュ、ハルニレとオヒョウの区別などができます。

葉痕も樹種によって様々であり、冬芽と一緒に覚えると良いかもしれません。

・形、大きさ、向き

・維管束の痕の数

などに注目すると良いそうですが、これは僕もこれからってとこですw


さ、次に枝です。夏は葉の陰になってなかなか見えませんが、裸になれば下のような特徴が明確に掴めます。

・対生、互生

・枝の粗密

・その他伸びかたに関する特徴

葉が対に生えるか否かはかなり重要な情報です。
一見似ている木でも全然違うじゃん、ってことがよくわかります。

枝の粗密とは、視点を換えれば葉の大きさです。
大きな葉や羽状複葉なら太い枝が大胆に伸びて終わり、
小さい葉の木だと枝が細かく分かれているのが(あくまで)一般的です。

場数を踏めばきっと枝の伸び方の特徴も見えてきます。
例えばミズキは「添伸」というとても特徴的な枝の伸ばし方をしているそうです。

そして、大きな樹木も小さな枝から成長するもの。
冬になればそこから成長した木全体の姿にも特徴が見出だせるかも知れません(ここはまだ修行中w)。



樹皮は、どちらかといえば上の二つで樹種を決定してから特徴を読み取る、
と言った方が僕にとっては近いかも知れません。

なにしろ他の特徴と比べ違いが掴みにくく、同種でも個体によって変異の大きいものがあるからです。
また木の年齢や健康状態によってコルク層の発達状況等も違い、単純なものではありません。

しかし、よく調べると樹皮の裂け方、あるいは肌触りなんかにも特徴はあるものです。
最終的に木の肌をみて種名を当てられることが今の僕の目標だったりします。



そして、無積雪時であれば落ち葉がたくさん積もっているというのもひとつの利点。
夏は高いところで茂っていても、落ちてるものならじっくり観察できます。

葉以外の特徴を調べてこれかな?と思ったら、
今度は下を見て候補の木と同じ特徴の葉を探すのもひとつの手でしょう。

また、枝についていた頃の葉はみんな緑色をしていますが、
落ちてしまえば色素も落ちて特徴的な色を見せる樹種もあります。
例えばミズキやヤナギ類の葉は他とは違う暗色がかった落ち葉で結構目立ちます。



おまけですが、中には秋につけた実や花の名残が残っているものもあり、
これらも木を同定する上で大きな手掛かりとなります。



とはいえこれだけ冬を推しても、夏から冬への移ろいと同様、冬から夏にかけても木は大変身するものです。
冬の姿で覚えた気になっても、芽生えの時期を見過ごしてしまえば積んだ知識と夏の姿が一致せず、
下手をすれば何も分からなくなります。

樹種の識別を明確にするのにも時間はかかりますから、何語とも「継続は力なり」ということですね。



さて、冬に山に行くことの欠点をあげるとすれば

・寒い

ですかね、やはり(笑)

加えて、そんな時期にまで押しかけると木の根がかわいそうなのも確かに事実。

まぁでも、冬の厳しさもその自然のひとつの姿です。
それを知ることも、大切なことだったりするのではないでしょうか。



そんな感じで、冬に木を見る物好きがどれだけいるかはわかりませんが(笑)、
もしもお出掛けになるときは万が一に備え、雪崩と猟師には気をつけてください。
それと、防寒対策も忘れずに(笑)。

ではでは^^