フモトミズナラとミズナラ

ミズナラより暖地に分布する「ミズナラ」】

東海地方には、フモトミズナラ 、という樹木が分布しています。

フモトミズナラは無印のミズナラに一見激似ですが、無印が生えない暖地に見られる樹種です。遺伝的にはコナラに近いとされる一方、モンゴリナラとミズナラの雑種起源だろうという意見もあって分類学上の位置付けはあまり定まっていません。

2005年に愛知万博が催されたモリコロパークに群落が存在することを知り、以来何回か僕は当地を散策しています。

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【フモトミズナラの特徴】

実際にフモトミズナラを見てみると、形質上は

「枝ぶりはミズナラっぽく冬芽はミズナラとコナラの中間くらい」
「葉っぱはミズナラに近く、カシワモドキにも似ている」
「樹皮はコナラっぽい」
「生えてる場所も温暖な尾根でコナラっぽい」
「マレッセントがコナラよりも起こりやすい」
「コナラよりも早く芽吹く」

といった特徴があるようです。

調べてみると、根は斜めに伸び、砂れきや花崗岩地帯の薄い土壌に生えやすいとのこと。

また、コナラとは分布域が重複しますが、フェノロジーの部分で棲み分けている気がします。ミズナラ好きとしては大変興味深い種です。

木曽川水園の「ミズナラ」?】

さて先日、木曽川水園というところに行ったときのこと。

この施設は木曽川流域の植物をいろいろ植えているらしく、様々な種を見物することができたのですが、その中でこんな葉を見つけました。

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お、ミズナラじゃん。

ん、

待てよ、

しかし木曽川流域にはフモトミズナラの自生地も含まれるのか。

すると、フモトミズナラがここに植えられていないわけはないのではないか?

そう考えると途端に無印なのかフモトなのかがわからなくなってしまいました。

葉の形質からいえば、フモトはミズナラと比べて

・幅広で大きめの傾向
・側脈の間隔は広い
・鋸歯は鈍くなりがち
・葉の先も丸くなりがち
・葉の裏に毛がない

というのが特徴なのだそうです(図鑑より)。

目の前の葉は尖っているし、葉の裏の脈状に明らかな毛がある。やはりミズナラか…

いやしかし、個体差が大きいだけだったり、夏にはまた形質が変化して、結局フモトなのかもしれない…

なんて考えていたらついに結論が出ないまま帰ってきてしまいました。職員さん、名札をください。。。


結局この日はグダグダと推論を重ね、一旦は「ミズナラとフモトミズナラ が混在しているのだろう」と締めくくったのですが、やっぱり気になって、後日職員さんに直接真相を聞いてました(以降は確認後の修正文です(6/17)。)。

木曽川水園のあいつは無印のミズナラ

結論から言えば、木曽川水園にはフモトミズナラ はないそうです。

特異な種であると分かったのが15年程度とそう遠くない昔であることも関係しているのでしょう。いずれにせよ、フモトミズナラ がいないという事実が分かったのですっきりしました。

フモトミズナラミズナラの違いを直接観察できなかったのはいささか残念でしたが、やっぱり僕の直感は正しかったのだ、とミズナラ好きの者としては喜ばざるを得ません。

園内の植生に明るい職員様に感謝。

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