【コラム】札幌雪まつりに学ぶ(未訂)

北海道を代表する祭典のひとつといえば、まもなく札幌市で開催する「さっぽろ雪まつり」です。

毎年200万人もの観光客が国内外から訪れるこの祭りは、

2005年の第56回で経済効果316億円を記録するなど、

今や北海道の景気をも左右する巨大な存在となりました。

そんな雪まつりも今年でなんと61回目。

だいぶ伝統を重ねてきたなぁという感じですが、

この祭り、いったいどのようにして誕生したのかご存知でしょうか?



雪まつりの原形を生んだ地は札幌市ではなく、小樽市梅ヶ枝町のとある小学校でした。

1935年、厳しい寒さが襲う季節のさなか、小樽市手宮尋常小学校(現:北手宮小学校)の校庭には、

懸命に雪像造りにはげむ児童たちの姿がありました。

全校の生徒が、まずはつもりに積もった雪の上をいっせいに踏み固めます

そのあと、低学年や高学年たちが分担・協力しながら

時には歌を歌い、しもやけを負った子を励ましたりしたながら

雪を切り、運び、積み、刻むという作業を根気強く行うことでようやく雪像は完成します。

こうしてその年の2月24日、のちに歴史を動かすこととなる北手宮小の第一回雪まつりが開催されました。

このお祭りでは、他にもスキー大会や雪戦会などが行われ、

父母達が見に来るなかで温かなそばを出す出店もやってきたらしく、

子供達にとっても、心に大きな思い出として残ったことだろうと思います。

ところで気になるのは、この祭りがどのような意図で企画されたのか。

探ってみると、そこには今の世に通じる教えが秘められているのでした。。

以下の文は、当時の「雪まつりと教育」という冊子に書かれている序文です。

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天地一自、ともすれば陰欝な冬眠生活に堕し易い冬も
スキー其の他の近代スポーツの流行によって生活が著しく明朗化され、
華やかな楽園が展開されるやうになつた。
時、恰も次回冬期オリンピツク大会を本道に招致せんとの気運は、あらゆる階級に対して、
その理解を深め、所謂健康北海道樹立の雄叫びとなり、着々その準備も進められて来てゐる
かつては、 煉獄嶽とのろはれた雪もーーこの雪こそ我が北国にのみ恵まれた自然の賜物であるとの自覚に、
かへつて礼讃の的となり、ここに本道文化の独自的なものが建設されなければならぬ
との強い要求とさへなつて来た。

本校の雪まつりも、かうした時代的趨勢にその機縁を有するものであるが、
ともすれば等閑に附されやうとしてゐる自然を尊敬し、 自然に随はんとする心を経とし、
恵み溢る自然的環境を緯として織りなせる冬期生活統制の一つの実践形態であつて、
要するに具体的な姿に於て児童の生命を豊かに培はんとするものである。

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札幌雪まつりの伝統は、自然が与えてくれる恩恵を顧み、自然を尊敬する心を養い、

自然と一体になることを目的として生れたものだったのです。

自然に親しみ、随うことで自然と融合一如の境地に立ち、自然を「まつる」。

悠久で巨大な自然の中で、我々は人間として生きている。

それ自体が多大なる恩恵であるということを感謝する機会としての雪まつり

それが、雪まつりの本当の姿だったのです。

またそのような体験をを人間の基礎が形成される幼少期に体験することは、

内面的郷土を建設する上でも重要な役目を担ったことでしょう。

子供は自然と対立した存在ではなく、自然とともにあると、文書には記されています。



この雪まつりの形態は、当時敗戦後でもあって落ち込んでいた札幌市を元気付けようと

沈んだ空気を盛り上げるイベントのアイディアとして取り入れられ、

1950年記念すべき第一回目のさっぽろ雪まつりが開幕しました。

最初の雪像展では、地元の中高生が6つの雪像を大通りに作り上げました。

他にも雪合戦やカーニバルの開催もあわせ動員数は5万人あまりと大人気。

それからも、時を経るとともに祭りは進化を遂げ、今に至るのです。

現在の雪まつり大通公園において使用される雪の量は、なんと5トントラック約6000台分。

ちなみにこの雪は純白のものが求められ、 近隣の大きな公園や港から、

不足した年には山間まで赴き雪を集めるそうです。

この巨大な祭典を、人々はどのような思いを抱きながら眺めるのでしょうか。

美しい雪像の数々を見て歩く機会があったなら、楽しい思い出を作る中にも、ちょっとだけ

北国の自然の恵みに思いをはせてみませんか?



ちなみに、北手宮小での雪まつりは今も続けられているそうです。今年もやるのかな。

彼らが今も自然への敬意を、「伝統」の真髄を引き継ぐ担い手となっているならば、

誇らしい限りです。

 
参考:
http://www5.hokkaido-np.co.jp/event/snowfes2005/view.php3?f=0074.200502156614.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%95%E3%81%A3%E3%81%BD%E3%82%8D%E9%9B%AA%E3%81%BE%E3%81%A4%E3%82%8A
http://homepage2.nifty.com/tamizu-otaru/miz148.htm
http://www.otaru.ed.jp/kitatemiya-ps/sub6.html
http://www.city.sapporo.jp/bunkashiryo/sodanshitsu/yukimatsuri.html