移ろいゆくものたち

そろそろ山の中では落ち葉の絨毯ができていますが、それらを蹴散らすとホオノキ(Magnolia obovata)やキタコブシ(Magnolia kobus var. borealis)、ミズキ(cornus controversa)、アズキナシ(Sorbus alnifolia)などの果実が見つかりました。
こいつらは総じて鳥散布種子であり、埋土種子になるとギャップが出来るまでチャンスを狙う賢い連中です。
ただし、地面に落ちているものは鳥散布の利点をなかなか生かせないのでちょっともったいなかったり。
地上性哺乳類の餌としてはどのくらい魅力があるんでしょうね。
 
虫の気配はまだかろうじて感じられます。
下の写真はササの上にいた白いテントウムシ
 
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調べてみるとどうやら「シロトホシテントウ」(Calvia decimguttata)という名前だそうです。
テントウムシって押しくらまんじゅうして越冬するイメージがありましたが、こいつの仲間はどこへ行ったのやら。
また取り残されたように木の幹で佇むフキバッタ、必死に血を吸いに来て鬱陶しいブユなんかもいました。
このように彼ら虫の全体的な勢いはかなり下火となりましたが、一部のアブラムシに限ってはただ今大発生中です。
トドノネオオワタムシ(Prociphilus oriens)、いわゆるユキムシですな。
あくびをしたら何匹か食べてしまいました。
そこはかとなく晩秋の味がしました(笑)。
 
最もお世話になっているフィールド、三角山もかなり落葉が進んで見通しがきくようになっています。
基本的にギャップ種であるオニグルミ(Juglans ailanthifolia)やヤチダモ(Fraxinus mandshurica var.japonica)、ホオノキその他もろもろは落葉が早く、サワシバ(Carpinus cordata)とかイタヤカエデ(Acer mono)とか、一斉に開葉するタイプのものは落葉が遅いんだそうです。
三角山でもそのような説明がしっくりくる景観の移ろいが見られるのですが、一つ気になったのがオヒョウ(Ulmus laciniata)の葉の図太さ。
もしかしたら僕の思い込みかもしれませんが、オヒョウの葉はなかなか紅葉・落葉が進んでいない気がします。
それの何が問題なのかというと、オヒョウは葉っぱの展開が一斉にパッと進 ま な い「順次開葉型」の木なのですが、そのような木は一般的には落葉が早いはずなのです。
そして現に周囲にある他の順次開葉型の木はだいたいどれも紅葉・黄葉又は落葉が済んでいる。
そんななかでまだ緑の葉が残っているという違和感。(もう霜も降りているのに……)
落葉は古い葉ほど早くおこるので、今見ているものは後発の葉たちでしょう。
したがって、僕の感付きが思い込みでなければ、オヒョウの後発の葉は例外的に寿命が長いか、後発の葉の開葉時期がかなり遅かったために、今はそいつがまだぴんぴんしているのか、という事になります。
順次開葉型の木は陽樹が多いのですが、オヒョウは耐陰性が強く、林内の稚樹もギャップとはあまり関係性のない分布をしているという調査結果もありました。
オヒョウは開葉の開始時期も相対的にかなり早い方だったので、これが通常のフェノロジーだったんだとすれば、着葉期間の長さとオヒョウの耐陰性の強さとに何か関係があるかもしれないなぁ、と一人でニヤリ。
 
それと三角山ではハクウンボク(Styrax obassia)の実がたくさん落ちていました。
この木も動物散布種子なんですが、これについてはなにやら知り合いの先生が研究をしているらしく、いくつか論文をもらったのでそのうちコラムにでも纏めようと思います。
……そのうち(笑
あとヤマシャクヤクの実とか、マムシグサの実とか、とにかく実りの秋って感じです。
尾根ではミズナラ(Quercus crispula)が綺麗でした。
 
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追記1:ちなみに、順次開葉型の木は内側の葉ほど古いので内側から紅葉・黄葉が始まり、一斉開葉型は環境の変化の影響を強く受ける外側から紅葉・黄葉が始まるんだそうです。
そんな事を知人に説明したところ、突然「あ、本当だ」と言って内側から黄葉を始めていたオオモミジを指差す彼。
たじろぐ僕(笑)。
カエデ属は一斉開葉型なはずなんです、教科書的には外側からなんです。
自然現象は簡単に説明できない場合が多いものです。
 
追記2:オヒョウは「順次開葉型」としていましたが、正確には「一斉+順次開葉型」とすべきでした。これについては別記事にまとめます。
ただし!着葉期間が異様に長く思われることは間違いない。間違いないんだ……。