円山の力

南区にある藻岩山は、かつてアイヌから「インカルシペ」と呼ばれ、物見の山であるとともに尊い神の山として親しまれていました。
モイワ、というのは藻岩山の北に位置する円山の昔のアイヌ語名であり、一説によれば和人が名前を取り違えたのだという事です。
その円山はアイヌ的扱いだとただの小山だったらしいのですが、一方で開拓時代には、円山で採石を行った石工たちが仕事への感謝の念を抱き、その山頂付近に「山神碑」なるものを設立したのだそうです。
 
そんな円山ですが、予告通りさっき行ってきました。
日が短くなったので登る頃はすでに西日だったのですが、なんとか日が沈む前に目的を果たすことが出来ました。
良好な自然を残す山なのですが、往復に時間がかからない、というのも円山の一つの魅力です。

さて、今回の僕の目的はずばり「オヒョウ」。
昔のデータですが、円山のオヒョウは構成樹種内で本数が3番目、蓄積が5番目に多いのだそうです。
オヒョウの写真を持っていなかったので撮影してきたかったのと、この前書いた記事の「感付き」が正当なものであるかどうか確かめたかったのが主たる動機でした。
結果ですが、予想通りたくさん見ることが出来、僕は大変満足です。
撮影したオヒョウの葉はこんな感じになります。
 
イメージ 2
 
相変わらずの携帯クオリティですが、先っぽが浅く裂けて面白い形をしているのがわかります。
間違いなくオヒョウですね。
ちなみに、葉は枝の先の方にしかなく、奥側は既に落葉が終わって葉痕が露出しています。
これはまさに「順次開葉型」の特徴であり、開葉時期の早かった葉が先に枯れ落ちたのだと言うことができます。
そして上の写真も好例なのですが、僕の「感付き」はやはり間違いではないらしく、円山でも元気な葉をつけたオヒョウが一斉開葉型で落葉の遅いミズナラなどに混じってかなり多く見つかりました。
 
イメージ 1
 
写真奥の緑色の葉は全部オヒョウです(二個体の若木)。
やはりきちんとフェノロジーを追えば、オヒョウは着葉期間がとても長い種であると言えそうです。
 
ただ、ここでふと疑問に思うのですが、こんなに遅くまで葉を活動させていて、霜の影響は大丈夫なのでしょうか。。
落葉に先だって葉の色が変わる現象は、葉に含まれる窒素等が樹体に再吸収されることに関わりがあります。
窒素を再吸収するのは、それを次世代の葉などに再利用するためです。
したがって、変色を経ずに落葉することは、葉から窒素の再吸収がされていないことを意味し、それは窒素の損失に繋がるといえます。
例えばケヤマハンノキは落葉直前まで緑の葉を保ち、最後は霜にやられて枯れ落ちるのですが、これは窒素固定菌リゾビウムとの共生によって窒素が豊富に得られているからできる贅沢な戦略なのです。
一方オヒョウには特にそのような共生関係があるという話はないので、落葉ぎりぎりまで緑色の葉っぱを保つことは大変リスキーであると考えられます。
果たして無事に紅(黄)葉→落葉のプロセスをたどることができるのか。
できれば最後まで検証していきたいですね。
 
なんて考えながら登山していたのですが、気がつくと「山神碑」にたどり着いていました。
せっかくなので五円を投じ、僕は手を合わせます。
すると急にかゆくなる背中。
実は夏ぐらいから背中に吹き出物のようなものが出来ており、たまにこんなふうに疼いていたので、僕はまたかと思って背中を掻きました。
この吹き出物、何回かかさぶたを引っ掻いて剥がしたことがあったのですが、今回は気持ちいくらいボロリと取れたのでちょっと驚く僕。
見ると……たぶん、かさぶたじゃない(!?)
直径2ミリくらいの黒っぽい粒が手の中に転がっていました。
かなり硬くて小石のようだな……いや……しかし……
なにかに似ている気がする……たとえば……
 
マダニの……腹(吸血後)とか……
 
神の御利益による祓除の瞬間でした。
山神様すげぇwwwwww
 
p.s.久しぶりにシマエナガを目視。やっぱりかわいい。
p.s.その二:思えばオヒョウの緑葉は被陰下の個体で多く見るような気がします。これも光環境へのフェノロジーの対応として捉えることが出来るでしょう。それにしてもオヒョウは際立つ。気にし過ぎか?w