#生物学

ドングリ実生の生存戦略

せっかくお正月ということなので、最近読んでいる原正利『どんぐりの生物学」(京都大学学術出版会、2019)から気になったトピックを取り上げ、思ったことを書いてみます。 【ドングリの子葉は開かない】 「子葉」という言葉は小学校の理科の授業で習うと思…

おいしい椎の実、しぶい楢の実【戦略の違い】

【シイの実は食えるという実体験】 先日、シイの実は美味しいという記事を書きました。 嫁さんがスダジイの実を食べていたという話が発端となり、自分でもツブラジイ(コジイ)の実を食べたところ、(生でも)確かに旨かった。という驚きをそのまま投稿した…

ツブラジイの実

【シイの実は食える】 ナラ類カシ類のドングリは渋くて相当手をかけなければ食えたものではない。 そんな話を方々から耳にし、「野生の堅果は総じて食えないもの」とばかり思っていたところ、 シイの実は癖がなくて普通に食べられる。 むしろ子供の頃よく食…

フモトミズナラとミズナラ

【ミズナラより暖地に分布する「ミズナラ」】 東海地方には、フモトミズナラ 、という樹木が分布しています。 フモトミズナラは無印のミズナラに一見激似ですが、無印が生えない暖地に見られる樹種です。遺伝的にはコナラに近いとされる一方、モンゴリナラと…

サツマノミダマシ

【たまには蜘蛛でも】 僕は基本的に植物を愛でる人です。鳥類のような目立つ存在ならまだしも、昆虫やクモのような小さな動物にはなかなか手が出ません。 とはいえ、小さな生き物も生態系の中では結構重要な役割を担っているのだから、そのうち覚えたいなぁ…

ヤチダモの芽吹きは遅い

【自然の中での結婚式】 先日、北海道で結婚式を挙げました。式場は美しい自然に囲まれたチャペルです。 恵まれた立地を活かし、式場は周囲の自然が最大限に映えるような造りとなっています。 結果から言うと大成功の式だったのですが、実は準備段階から、僕…

ウワミズザクラの出現頻度と生態

【ウワミズザクラの疑問】 僕が住んでいる岐阜の林相については、僕自身まだまだ経験的に知らないことが多くあります。 昨冬に冬芽等による樹種同定を手伝う機会があり、奥地から持ち帰って来た枝枝を調べたときはかなり勉強になりました。 ただ、樹種を調べ…

街と森のあいだ

3度目の受験となった分類に関する資格の2級植物部門に合格しました。十分な勉強ができているとはいえず、お世辞にも知識があるとはいえない現状なので、少し複雑な嬉しさを感じます。このまま受験が恒例行事化するのかなと思っていた節もあり、来秋に大阪へ…

あえて乗っ越し

先日、ちょうど早起きできたので、山開きだった夜叉ケ池まで吸い寄せられるように登りに行った。体力の衰えゆえに思ったよりもペースが上がらず案の定ヘトヘトになった。手にした地図も「早く進みたい」という願望とのギャップが生じたためだいぶ読み間違え…

クマハギ対策

先日登った山にこんな風景を見つけた。 スギ(Cryptomeria japonica)たちが緊縛されている…? 人工林であることから、これが林業上の措置であることは推察できるが、目的がわからない。肥大成長すれば幹を締め付けてしまうのではなかろうか。いやSMじゃあるめ…

アセビ谷

全体的にアセビの多い山だが、特に堰堤が設けられた浅い谷では花が目立った。 もっと上まで登れば花が咲いている個体は他にもあったが、ここの目立ち方は特別だった。何か理由があるのかもしれない、と考えたくなる。

スミレの復習

久々に山を歩いて幾つかのスミレに出会った。 たぶんだが、オオタチツボスミレ、タチツボ、(ヒゲ)マルバ。 前二者は初めて同所的に見て、葉がこんなに違ったのか、と驚いた。 スミレサイシンの花後の姿もあった。デカすぎてカンアオイ類を疑ったのはここだけ…

河原の公園と樹木

近場の木曽川付近を散歩してみた。 いたるところに白い実をぶら下げた木がある。 センダン(Melia azedarach)という木らしい。沿海から丘陵の明るいところに生えやすい。ただしこの辺のは自生種ではないようだ。 近くにアキニレ(Ulmus parvifolia)と思しき木…

モチツツジの越冬

登り納めの金華山、モチツツジ(Rhododendron macrosepalum)がこんな時期に新しそうな葉を出していた。 そんな個体が随分と多く、むしろ例外がなかったので調べてみたら、やはりこの種は半落葉性だった。冬に落ちる葉がある一方で、冬を越す葉もあるのだ。 し…

シラカシ

とあるところにシラカシ(Quercus myrsinifolia)が記念樹として植えられていた。 よく見ると先端が黒変した葉が多い。 通水障害によるのか、気温変化などが影響しているのか、気になる。 地面には堅果がたくさん転がっている。 しかしそれ以上に、結実しそこ…

【コラム】ミズナラの種子生産からいろいろ考える

9月某日の新聞に「秋のヒグマ出没、極端には増えないと予想 北海道内「ドングリなど豊作」なんて記事が載っていたのを見たときは、「お、まじか!」なんて思ったものだ。なぜなら筆者はミズナラという木が大好きだからだ。大好きな木が子沢山ともなれば、こ…

ああミネカエデ~この高潔なるもの~

久しぶりの投稿。最近僕はとある山奥に住み込みで働いており、このようにパソコンやインターネットや電気ガス水道などといった文明的な暮らしに戻ってくるのも大変久しぶりであります(一部誇張を含む)。 現在、山の上のほうでは僕の好きな花の中でも特に好…

【コラム】シラカンバは痩せ地に強いのか?(一訂版)

ずいぶん久しぶりの更新となってしまいました。唐突の新規記事として、今回はふと疑問に思ったシラカンバの生育特性について考えてみたいと思います。 シラカンバ(Betula platyphylla)はカバノキ科カバノキ属に分類される落葉広葉樹です。純林を作ることが…

キク科の多さ

草本類の図鑑を開くとその規模を実感する。wikipediaによればキク科(Asteraceae)は世界中に分布し、日本では70属360種が自生している、もっとも進化し、もっとも分化している植物なのだという。 とりあえず手元にある植物図鑑に載っている属名を挙げてみよ…

【コラム】オヒョウの開葉は何型?~言葉の定義は大切だ~

先日書いた近況報告の記事において、私は「オヒョウは順次開葉型である」という事を書いたが、後に検索をすると「オヒョウは順次ではなく一斉+順次開葉型である」との意見もみられた。実際は何型と表現するのが妥当なのだろう? 私が「順次開葉型」とした根…

【コラム】ギャップと更新

今日はいつもより学術的な話をします。 森の中を歩いていると不意に陽だまりが出現することがあります。よく観察すれば、地面には大きな倒木が見られるかもしれません。天井を埋めていたそれが倒れることによって、ぽっかり穴があいたのです。 このようなこ…

2011年度春のクマさん

どうもお久しぶりです。 先日僕は天塩地方の大学演習林へヒグマの調査に行ってきました。 当調査への参加は去年に続き二回目。 「ただいま!」と「初めして、お邪魔します」の二つの想いを胸に抱えての11日間でした。 去年との大きな違いは雪が少なかったこ…

【コラム】冬の木の顔1

割とスパンの短い更新ですが、ネタがあるので記事を出しときます。 今回はずばり冬芽特集。 落葉樹って冬は葉が落ちているからパッと見全部一緒ですが、冬芽から覚えた木が多い身としては、冬の姿のほうが特徴が出ていて分かりやすい気もします。よく見れば…

市街地でじゃれあうヒグマ射殺

道新にこんな記事があるのを発見した! 以下コピペ 【斜里】18日午前11時25分ごろ、オホーツク管内斜里町の朝日小学校近くの林で、「ヒグマ3頭を目撃した」と同校から町に通報があった。地元ハンターが約30分後、同校から約300メートルほど離れ…

春が、来た

久しぶりの更新ですwGW終わっちゃいましたねー 僕はこの1週間とちょっとで某ヒグマ調査団体の一員として天塩の某研究林に行ってきました-ω- 朝は地形図片手に森の中をひたすら歩き回り 昼は寝て(笑)、夜は報告会と会議、そして宴会というスケジュール ヒ…